■□ 王道通信 □■ Vol.53
目次
1...専業大家の独り言 〜 金融機関のスタンス
2...借地入門(10) 〜 借地の整理
3...編集後記
1...専業大家の独り言・白岩貢
◇金融機関のスタンス
アパート専業大家・白岩貢
- アパート経営であたり前のように行なわれてきた「家賃保証」。
私は以前から、そんなもの信用してはいけないといってきました。
だって、「家賃保証」するのはハウスメーカーやアパート専業メーカー。
彼らは建築工事が欲しいのです。
建築工事で利益を上げることが第一の目的であり、言い方は悪いのですが、「家賃保証」をそのためのエサにしているのです。
最近、賃貸住宅の管理戸数が50万戸を超える業界ナンバーワンのD社が、創業者による株式の売却騒動で話題になっています。
D社がここまで急成長した原動力のひとつが、家賃保証。
D社に頼んでアパートを建て、管理を任せているオーナーは、仮に空室がでても一定額が保証されるというものです。
でも、実際に家賃保証するのはD社ではありません。
大家さんたちが家賃の一部を出し合い(実際には管理担当の子会社が徴収して?)、空室の出た大家さんにまわしていただけのことです。
いわば、大家さん同士の相互扶助の仕組みであり、D社はほとんど自腹は傷みませんでした。
この仕組みそのものは素晴らしいビジネスモデルで、D社は急成長。
でも、偽装派遣などもそうですが、他人を踏み台にした1人勝ちはいつまでも続きません。
最近、法律が変わって、D社の家賃保証の仕組みが共済事業に当たるとされ、見直しを余儀なくされました。
仕方なく、子会社で一括借り上げを行なうという方式に切り替えたのですが、そうなると空室が発生した際のリスクが直接、同社(子会社)に降りかかってきます。
そこで、オーナーとの間で契約を変更する交渉を行なっているそうです。
当然、保証される家賃の見直しなどオーナーにとって厳しい条件が提示され、あちこちでもめているとか。
ハシゴをはずされた格好のオーナーはたまりません。
でも、自分で何も考えず、D社に丸投げしてきた大家、オーナーたちにも責任がないとはいえないでしょう。
アパート投資はいわば、数千万円を投資して行なう起業です。
普通の起業家なら、顧客は誰で、どんな商品やサービスを提供し、運営体制はどうするかなど、一生懸命考えるはずです。
それを「家賃保証だから安心」といって何の疑いもなく信じるなんて、ちょっと甘いのではないでしょうか。
「家賃保証」なんて当てにしないところから、本物のアパートづくりが始まるのだと思います。
借地入門(10) 〜 借地の整理
- 借地はひとつの土地に、地主(底地権者)と借地人(借地権者)がいて、基本的にお互いの利害は相反しています。
地主にとっては、自分の土地なのに使用することができず、しかも地代はかなり安く押さえられており、固定資産税の負担を考えると、
利回りはかなり低いでしょう。
さらに、相続が発生した場合、相続税の負担がかなり重く、物納を考える地主も少なくありません(物納もそう簡単ではありません)。
売ろうと思っても、底地を買う人は借地人を除くとほとんど考えられません。
一方、借地人にとっても、一応土地を使う権利はあるとはいえ、いろいろ制限がついてまわります。
建替え・増築・改築などの際、承諾料を支払わないといけませんし、借地権を売却しようとしても資産価値としては所有権に比べかなり低くなります。
また、借地権は担保としての価値が低く、基本的に融資の対象となりません。
こうしたことから、実際には底地・借地を整理しようという考えが、地主、借地人それぞれの立場で生まれます。
実際には、双方とも相続が発生したときが大きなきっかけになります。
基本的な底地・借地の整理方法は大きく分けて4つです。- 借地人が底地を買い取る
- 地主が借地権を買い取る
- 地主と借地人が一緒に第三者へ底地・借地を売却する
- 地主と借地人の間で、底地と借地権の等価交換を行う
買い取りには資金が要りますから、資金力のあるほうが買い取りを希望するようです。
(1)の変形として、地主の側に相続が発生し、底地が国に物納された後、借地人がこれを買い取るというケースもあります。
底地が物納された場合、借地人は国に地代を払うことになりますが、国が底地を借地人以外の第三者に売却することはありませんし、国から底地の払い下げを受けることもできます。
編集後記
- 最近、雑誌ではマンションなど不動産市場についての特集が目立ちます。
新築マンションは売れ残りが目立つようになり、大変なようです。
一方で、外資が東京都心の不動産を買うという話も相変わらず続いています。
グローバル経済の波は不動産にも及んでいて、国内の買い手しかいないようなエリア、物件は弱含みですが、海外の買い手が興味を示すようなエリア、物件は強含みということなのでしょう。
ビジネスの世界でもグローバル化に対応している企業、サラリーマンは「勝ち組」、そうでない企業、サラリーマンは「負け組」という傾向が見られます。
とすると、アパート経営におけるグローバル化はどうなんでしょうね?(古井)