■□ 王道通信 □■ Vol.29
目次
1...専業大家の独り言 〜 建築確認申請の混乱
2...不動産投資入門 〜 サブプライムローン問題の影響
3...編集後記
1...専業大家の独り言・白岩貢
◇建築確認申請の混乱
アパート専業大家・白岩貢
- 建築基準法が改正され、6月20日から施行されています。
今回の改正は、例の耐震偽装マンション事件の影響で、建築確認申請を厳格化するもの。
これまで、設計図書に多少、不整合などがあっても、役所や確認機関との間で調整しながら直すのが一般的でした。
それ自体は“大人の知恵”とでもいうべきもので、特に問題はないと思うのですが、なぜか今回の改正では、とにかく建築確認申請の書類が100%完璧でなければ受け付けないというスタンスに変わったのです。
また、建物の構造や規模によっては、従来よりはるかに多くの書類を出さなければならなくなりました。
さらに、構造計算書について、ピアチェックといって、構造設計の専門家によるダブルチェックが行われるようになったので、非常に時間がかかり、実際の運用ルールも定まらないので、大変混乱した状況になっているのです。
自治体の建築審査部門の中には「うちでは時間がかかりすぎるので、急いでいるなら民間(民間の指定確認検査機関)で出してくれ」といったケースもあるとか。
ある建築専門雑誌が建築士を対象にアンケート調査したところ、回答全体のなんと49%が着工に遅れが出ている物件があるという結果だったそうです。
そもそも改正後の新しいルールでは、建築確認の審査期間は、従来の21日間から35日間になり、さらに詳細な構造審査が必要な場合には最大70日(2ヶ月以上!)もかかるようになっています。
欠陥建築を防ぐには、設計図書の通りに建築されているかのチェックも重要なはず。
書類の審査ばかり厳格化しても、バランスが悪いのではないでしょうか。
こうした建築確認申請の厳格化の中で、ほとんど唯一の例外は、
●木造住宅
●2階建て以下
●延べ床面積500m2以下
●高さが13mかつ軒の高さが9m以下
の建築物です。
これは「確認の特例」といわれるもので、ほぼ従来どおりの処理がされているようです(ただし、平成20年12月には見直される見込みで、それ以降は専門能力を有する建築士による設計の場合のみ特例が設けられる予定)。
この「確認の特例」の対象外となると、膨大な設計図書が必要になり、余分な設計費用や設計の時間がかかります。
不動産投資を行う大家さんにとっては、大問題。対応策としては、デザイン、構造、設備の整合性がとれた設計図書をきちんと作成するしかありません。
王道設計チームでは、そこをなんとか短縮化の努力をしてもらっていますが、大家さん自身、工事が始まってから「ここのデザインを変えたい」「設備をこちらにしたい」といった変更は慎まないといけません。
設計の力量がますます重要になることは間違いないでしょう。
王道チームとしても、そうした意思統一と対応策の研究を設計者・施工者会議などで行っていくつもりです。
2...不動産投資入門 〜 サブプライムローン問題の影響
- 最近、にわかに注目されているアメリカの「サブプライムローン」。
世界中で株価が急落し、外国為替市場では円が急騰(円高)した原因とされます。
思わぬ損失をこうむった個人投資家も多かったようです。
サブプライムローンとは、優良(プライム)とはいえない、ちょっと問題のある借り手に対して貸す住宅ローンのことです。
その特徴は2つあり、ひとつは借りやすく(貸しやすく)するため、返済当初3年程度は金利を抑えたり(それ以降は市場金利に合わせてアップ)、当初は金利の支払いだけにしたりすること。
もうひとつは、将来的に返済が滞る可能性が高いので、返済当初の優遇が終われば、金利がかなり高くなることです。
この2つの特徴は、日本でも住宅金融公庫がかつて扱っていた「ゆとり返済」(当初5年間は返済額を抑え、6年目以降アップする返済方法)にあてはまります。
そして、「ゆとり返済」では6年目以降に返せなくなる人がたくさん出ました。
さて、貸し手の銀行は、このサブプライムローンを証券化(難しいのでここでは説明を省略)することでリスクを分散し、一方、世界的な金余りの中で有利な運用先を求める投資マネーがこうした高金利・高リスクの債権を組み込んだ金融商品をどんどん買っていたのが、今回の問題の背景です。
もともと収入が低い層に、最初は借りやすくても本来は金利の高いローンをじゃんじゃん貸すのですから、なにかおかしいのですが、担保となる住宅価格が上がっている間はまだ良かった。
むしろ、本当ならマイホームを買えない人が買うことで、住宅ブームを煽った面もありました。
さらに面白い(?)ことに、サブプライムローンの問題は、低所得層が多く住む地域だけでなく、投資需要が集中した高級リゾート地でも見られるというのです。
投資用にサブプライムローン(あるいは同じような仕組みのローン)を利用した投資家が多かったということなのでしょう。
ところで、今回のサブプライムローン問題が、日本での不動産投資に与える影響については、どう考えたらいいのでしょうか。
第一に、ローンの金利ですが、上昇するのかというと、そうでもないようです。
サブプライムローンを証券化して組み込んだ金融商品は利回りの高さが売り物でしたが、そのリスクがはっきりしたことで、資金はいっせいに安全な運用先、特に国債などへ流れています。
そのため、各国とも国債の利回りが急低下(価格は上昇)しています。
もちろん、日本は超低金利が長く続いており、徐々に上昇していくでしょうが、当面はその流れがストップすると思われます。
第二に、金融機関の姿勢ですが、これは明らかに従来より慎重になることが予想されます。
多少、返済能力に問題があっても、地価や住宅価格が上昇していれば安心して貸せますが、それが行き過ぎたのが今回のサブプライムローン問題です。
日本の金融機関はこれを「他山の石」として、融資の審査にはかなり慎重になることが予想されます。
不動産ローンの審査では通常、借りる人の属人的な条件(収入、勤務先など)と融資対象となる不動産の物的な条件(担保価値や収益力など)を見ますが、いずれもこれまでより厳しく審査されるでしょう。
土地建物一緒のフルローンなどは、難しくなると思われます。
第三に、地価の動きですが、バブル的な部分が消えるのではないでしょうか。
一部、上がりすぎたところは下がると思われます。
同時に、売り物件も増えてくるでしょう。
特に、先高観から転売目的で買っているような法人、個人は、投売りに走るケースもあると思われます。
これからしばらく、不動産投資市場の状況も大きく揺れ動くでしょう。
ただ、それは必ずしもマイナスばかりではなく、キャッシュや土地を持っている人(会社)にとっては、有利な条件で土地を探したり、建物を建てられたりするかもしれません。
投資の妙味は、市場が大きく変動するときにこそあるのも事実です。
編集後記
- 今年は本当に日本中「いったいどうなったの?」というくらい暑い日が続きました。
フロリダから来た米国人によれば、「フロリダよりずっと暑い」ということでした。
このまま平均気温の上昇が続くと、日本は亜熱帯になって、マラリアが流行するという説もあるようです。
一方、先週末、富山の実家にお盆休みで帰ったのですが、今年は蚊が全くいませんでした(昨年はかなり刺されたのに)。
何か暑さと関係があるような気がしますが、よく分かりません。
そういえば、2〜3年ほど前、実家の周辺では夏から秋にかけてカメムシが大量発生して困っていました(家の中にもたくさん入り込むのです)。
昔からカメムシが多い年は大雪になるといわれていて、実際、その年の冬は久しぶりの大雪でした。
生き物の様子には、何かしら予兆があるのでしょうね。(古井)